大阪府太子町で見つけた植物をご紹介する太子ネイチャー、第44回目は「沈丁花(じんちょうげ)」です。
松任谷由実さんの曲である「春よ、来い」の中で「いとし面影の沈丁花 溢るる涙の蕾から ひとつひとつ香り始める」というフレーズがあることでとても有名ですよね。
沈丁花は春を代表する花なので、人の出会いや別れを表現し、数多くの文芸や歌謡にも用いられています。
皆さんは沈丁花の香りを嗅ぐとどのようなことを思い出しますか?
甘い香りで魅了する沈丁花は太子町を歩いていると、そこかしこで見かけることができます。
沈丁花(じんちょうげ)
沈丁花(じんちょうげ)の原産は、中国やヒマラヤで、日本には室町時代に伝わったとされいます。
沈丁花は、一年中緑の葉をつける常緑樹で、高さは1〜1.5メートル程と背丈が低い樹木です。
白やピンクの肉厚な花をたくさんつける沈丁花は3月から4月にかけて開花し、暖かくなるにつれ甘い香りを放つので、春の訪れを知らせてくれる花の一つです。
こまめに剪定をしなくても、丸みを帯びた形を保ってくれるため、日本では庭木として人気がある他、公園や道路の樹木として植えられています。
沈丁花の花は実は花びらではない!?
沈丁花は、一つに房に10〜20の「花」をつけているように見えますが、実はこれは「花」ではありません。
いっけん花びらのように見えるものは「ガク」で、このガクが筒状に進化したものがまるで花のように見えているのです。
花びらを持たない沈丁花はとても長持し、20日以上も咲き続けるといわれています。
その昔、このガクの部分を煎じて「歯痛」や「口内炎」に民間薬として用いられていました。
沈丁花の名前の由来
沈丁花という名前の由来は、香木(こうぼく)の「沈香(じんこう)」と「丁子(ちょうじ)」という樹木を合わせたような香りであることから、名前がつきました。
沈丁花の香りはとても強く、夏のクチナシや秋の金木犀と共に「三大香木」と称されています。
「三大香木」の中でも沈丁花は一番香りが強いとされ、古くから別名「千里香」とも呼ばれていましした。
これは、千里先(500Km先)まで香りが届くという意味で、昔から印象的な香りであったことが分かります。
春を知らせる香りから、俳句の季語や歌の中でも活躍をする沈丁花は現在開花の見頃を迎えています。